囀リは消えゆく
私には何もないのに
そこには何もないのに
ただ、
ただ…囀っている
これはどこで
いつ撮ったの
という写真が
時々あるのは
なぜなのか?
冷凍庫に凍らせてあった葡萄が
吐き気がおさまったあとに
束の間の幸せをもたらした
この小さな喜びが訪れるたびに
僕はリセットされて
中身のない人間になっていく
食べ残した皮みたいにさ
宇宙百貨のマットというかシートというか
(なんていうのだろう)
いつごろ購入したのか
忘れたくらいには
年月が経っている
裏は劣化が激しく割れてるから
いつまで持つかな
僕の内側と一緒ですね
(表が劣化しているのは初めからだ)
ともに生きよう最後まで
小説『幾許』に登場する、小田さん
外の鳥かごには、鳥が何匹もいた
名前は全部「ぴーちゃん」
水をあげるとき
結構な頻度で
ぴーちゃんは脱出するのだった
「ぴーちゃん!」
青々とした空に力強く叫んだあと
「薄情だなあ」
と囀る小田さん
とうとうぴーちゃんは一匹も
いなくなってしまった
いつか鳥のいない鳥かごを撮りたい
私がいない世界を
私には撮れない、
花以外の写真は小田さんが撮った写真
命日に記念として残しておこう
嘔吐しすぎたときの味に似てるから
どうしても食べられない
苦味
価値の無い偽者が
フェンスの内側で
意味の無い言葉を
撒き散らしている